現在の研究テーマ

これまでその時々でいろんな方向に揺れていましたが、最近では自分で実験できる年月もそう長くはないのでやりたいことをやろうと開き直っています。その反面、小ネタ(単発ネタ)ももう少しやりたいなと思っています。以下は大学院生募集用パンフに掲載している内容です。



自然科学とは、自然界で起こる現象を実験や観察結果に基づいてどのように理解するかを問う学問であり、より統一的に理解することを目指している。自然科学の醍醐味は、実験と理論で互いに検証しながら自然に対する理解を深めていくところにある。現代の科学は高度に精密化、多様化しており、たとえ自分の専門分野であってもその全貌を詳細に理解することは困難である。しかしその一方で、洗練された機器や先端的な理論を組み込んだ計算プログラムを、その分野のプロフェショナルでなくとも利用できる時代でもある。後者の利点を生かせば、先端的な実験と理論計算の両者を自ら実施することで、これまで発展してきた科学を精緻に問い直すことが可能である。そのような研究は科学をより強固なものにするだけでなく、新たな科学を切り拓くことにつながるかもしれない。
本研究室では、高真空中でのイオンやラジカルと分子との化学反応に関する実験と量子化学計算を通して、宇宙の創生に伴う分子の生成と成長過程を詳細に検証し、生命の起源に迫ることを目標としている。この目標のもとに以下の研究を推進している。

1.素反応研究に適した質量分析法や分光法の開発
電子移動反応やプロトン移動反応は、単一の荷電粒子が反応物間を移動するという観点においてもっとも単純な素反応過程である。しかし、多くの化学反応では複数の荷電粒子からなる構造体(原子や分子イオン、分子フラグメントなど)の移動を伴う。そこで、このような反応をできるだけ単純化した系で詳細に研究するために、高真空中でのリチウム正イオン移動反応実験装置の開発を進めている。様々な原子や分子、ラジカルに対するリチウム正イオンの付着エネルギーは極性分子に対してすら高々2 eV程度であり、リチウム正イオンの付着によるターゲット分子の解離は起こらない。そのため、この移動反応に関する理論的な取扱いは単純化され、詳細に検討することが可能である。
リチウム正イオン移動反応は超高真空中で利用できるフラグメントフリーなイオン化法として利用できる可能性を秘めており、質量分析法への応用が期待される。さらに、リチウム正イオン付着分子からリチウム正イオン自身を再び脱着させる方法を開発することで、ラジカルのような反応性の高い化学種の絶対量を定めて反応実験に利用できる装置を開発することを目指している。

2.反応性プラズマ中での分子成長に関する研究
反応性プラズマ中には様々なラジカルやイオンに加え、少量ながら導入ガスに比べて分子量の大きな化学種が存在している。当研究室では、リチウム正イオン付着イオン化法を利用した質量分析法を用いて種々のパーフルオロカーボンプラズマやハイドロカーボンプラズマ中に存在する分子量の大きな化学種を同定し、その生成機構について研究を進めている。これまでの研究により、メタンプラズマ中で観測された質量数の大きな様々な炭化水素分子は、プラズマ中でチェンバー内壁に堆積した膜からのアブレーションによって気相中に再放出されていることが判明した。一方、四フッ化炭素プラズマ中では膜が堆積しないにも関わらず、分子量の大きな様々なパーフルオロ化合物が気相中に観測された。このことは正イオンについても同様である。正イオンについては気相中での付着反応の繰り返しによる成長機構を考えることで実験結果を定性的に説明することはできた。しかし一般に、気相中での付着反応による分子やイオンの成長は圧力の低下とともに急激にその反応確率が低下するため、定量的な検証が必要である。このような研究は、宇宙空間における分子の成長過程の研究と直接関係している。また、反応性プラズマは表面改質やエッチング等のための有効な方法として工業的に幅広く利用されており、本研究はそれらの反応機構の理解や反応効率の改善に導くことができる。

3.量子化学計算と実験結果との詳細な比較と検討
イオントラップを利用したイオンと分子との反応実験装置では未反応の反応物イオンとすべての生成物イオンを観測することができ、さらに、絶対反応断面積とその衝突エネルギー依存性を決定できる(上記1に記した開発中の装置ではこのような実験も可能である)。すなわち、このような実験によりイオンと分子との反応の全体像を定量的に捉えることができる。一方、反応ポテンシャル曲面上に存在するすべての安定物や遷移状態の構造、解離チャネルを現実的な時間でくまなく探索する理論が最近開発された。この理論計算によって得られる結果もまた、イオンと分子との反応の全体像を提供できる。したがって、両者の結果を詳細に比較検討することで、理論自身の是非や、理論計算に取り入れられていない効果を明らかにすることが可能となる。このような発想に基づき、当研究室ではCF3+とCOとのイオン-分子反応実験を行い、さらに、その反応ポテンシャル曲面の全面探索計算を実施して考察を進めている。他の反応系についても同様な研究を推進すべく、実験装置の開発や量子科学計算プログラムの整備を行っている。


(2017年11月20日追記)
最近、プラズマ中におけるクーロン結晶の観測にハマっています。今年2月ごろから構想を練り、既存の部品をかき集めて装置を組み立ててオリジナルなアイデアを組み込んだ装置を開発しました。


図1. 実験が上手く行き始めた初期に撮影した思い出深い写真(iphoneで撮影)


上手に実験するとこんな結晶を観測できます(上から撮影)。




興味深い現象をいろいろと観測しています。シミュレーションも進めています。これからが楽しみです。



≪研究室への配属を希望する方へ≫
私は筑紫キャンパスの総合理工学府物質理工学専攻を兼務していますが、研究室は伊都キャンパスにあります。そのため、私の研究室に所属すると、講義は筑紫キャンパスで受講し、実験は伊都キャンパスで行うことになります。キャンパス間の移動が大変なのを承知の上で一緒に研究してくれる方を募集しています。興味のある方は電子メールで連絡してください。

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